『Belvedere The Spectre 007 Cocktail Challenge 2015

世界初ラグジュアリーウォッカであるベルヴェデールが、2015年、世界的にも有名な映画作品『007シリーズ』とグローバル・パートナーシップを結び、グローバルカクテル チャレンジ2015を開催。ボンドのトレードマークともいえる“shaken, not stirred”された マティーニを越える、次世代のレジェンダリーマティーニを競うコンペティション、ジャパンファイナル予選が4月5日に行われました。 ジャパンファイナル予選では書類選考を通過した20名で競い、10名が次のステップに進むことができます。
次のステップではビデオエントリーでロンドン本社に提出するビデオを選考された10名が撮影を行い、ロンドン本社に提出。そして、少なくとも日本からは1名が選考され、5月17日から19日までシドニーで行われる、アジアパシフィックリージョンでのチャレンジに出場することになります。 このたび私は、日本でのファイナルを終え、アジアパシフィックリージョンでのチャレンジに出場することができました。



チャレンジは2つあります。一つは日本の予選でプレゼンしたカクテルの作成。そしてもう一つはマティーニツイストチャレンジでした。 まずは、一つ目の作品の紹介をさせていただきます。
ボンドガールをイメージした、カクテル名Undercover Martini。Undercoverとは覆面という意味です。ボンドガールの秘めた素性がすぐにわからないキャラクターにインスピレーションを受けてこのカクテルを作成いたしました。ボンドガールとベースのベルヴェデールウォッカは洗練かつ、ラグジュアリーという共通なイメージがあります。材料はベースであるBelvedere、タイムインフュージョンのリレルージュです。御存知の通り、有名なボンドマティーニはリレブランを使用していますが、今回は女性を連想させるルージュを使用いたしました。
タイムをインフュージョンさせているのはタイムのハーブ言葉が「行動的」で「アグレッシブ」であるからです。これもボンドガールを連想させます。そして、女性らしいリキュール、クレームドカシス。ベルヴェデールの産地であるポーランドは、カシスの産地においても有名です。そして最後にレモンシロップを加え、シェイクします。そして、グラスには黒いマティーニグラスを使用いたしました。口にするまで味がわからない、謎めいたイメージだからです。インパクトもありますし、黒いと何も想像ができないからです。敵か味方かわからないボンドガールからインスピレーションを受けたイメージを黒いグラスでも表現いたしました。秋口に公開される 『007スペクター』(幽霊)という意味もかけました。きっとプレミアム試写会にお越しになるお客様にも中身を想像する楽しさを提供できると思ったからです。
デコレーションはグラスのステムにビーズをあしらい、ボンドガールとベルヴェデールのラグジュアリーさを表現いたしました。


そして、もう一つのマティーニツイストチャレンジではカクテル名Royal Martiniを作成いたしました。1830年代に誕生したMartiniをBelvedereで復刻し、心地よい食前酒カクテルにいたしました。 Martiniは最初GinとSauternes Wineで作られた時代があり、その当時の甘みを帯びたMartiniを作成いたしました。今回はせっかくですので、日本のデザートワインを使用いたしました。
そして、Belvedereのテイストにある深いスパイス感を出すためにVanilla Bitterを加えました。ポーランドでウォッカが誕生した時は、薬として使用されていました。そこから着想し、ポーランドの薬草のリキュールGold Wasserで“in and out”リンスしました。そしてこれらの材料と爽やかなシトラスをより強調させるためにオレンジピールを入れ、シェイクします。ガニッシュは金箔とオレンジピールを使用し、Belvedereのラグジュアリー感とMartiniが発展したGold Rashの時代も表現しました。使用グラスはロックグラスです。Martiniが生まれたときのように脚なしのグラスで召し上がっていただきたかったからです。 これら二つのチャレンジで使用できる材料は4種類のみだったため、いかに4種類で甘み、酸味、コク、香りを表現できるかが一番苦労した点です。


アジア予選では日本から2名、オーストラリアから8名、ニュージーランドから1名、香港から1名、シンガポールから2名、インドから1名の計15人で競いました。うち、3名がロンドンでのグローバルチャレンジへ進むことができる予選でしたが、残念ながら、その次のステップへと進むことはできませんでした。 海外のコンペティションへの挑戦は今回で3回目でしたが、いままで感じることのなかった(気づくことができなかった)ことを感じました。それは、他の国とのマーケットの違いです。そして、ジャッジが変われば評価も変わる、国が変わればチャレンジの理解も変わるということです。
日本での選考後、審査員の一人にフィードバックをもらいに伺いました。評価はとても良く、これ以上特に言うことはないとのお言葉をいただきました。そして、シドニーでの選考後、審査員の方から自分の作品・プレゼンテーションのフィードバックを伺いました。プレゼンテーション、ストーリー、英語(プレゼンテーションは全て英語)、カクテルの味わいは非常に良かったとおっしゃっていただきました。では、なぜ次のステップに進むことができなかったのか・・・。少し甘かった、ベースをもっと効かせるべきだった、と。おいしいものはおいしい。それは、どの国で提供しても変わらないものだと思います。だた、国が違えば審査員も違います。最終的に評価をし、採点するのは審査員です。自分では一番のレシピと思っていても、その先のジャッジする人のことまで考えていただろうかと自分に問いかけました。通常営業でもお客様の好みに合わせて味わいをアレンジすることは当然のことです。コンペティションでも同じです。人に対して提供するものなのだから、その人のことを考えることでより、評価してもらえるカクテルを提供できるかもしれません。極論をいえば、ジャッジ一人ひとりの好みがわかれば最高だと思いました。
そこまで私が考えていなかったのが、次のステップへと進むことができなかった原因だと考えています。レシピに関しては日本での書類選考に出す前から、海外で審査をされるということも考慮すべきであり、また、いかに短い時間で自分のパーソナリティーをアピールできるのかも、もっと考えるべきであったと思います。
そういった意味で、学ぶことが多かった今回のチャレンジでした。3回目の海外大会だから感じたのか、20年弱のバーテンダー経験から気づくことができたのかはわかりませんが、とても考えさせられました。 チャレンジが行われた場所は、軍が使用している別荘を貸しきったものでした。キッチンで準備するもよし、シアタールームで『007』の映画を楽しむもよし、ダイニングでブッフェを食べるもよし、昼寝の部屋もありと、おのおのが自由に過ごすことのできる素晴らしい環境でした。また、パーティーは船上で行われ、結果発表はそのパーティー会場である船に乗りつけたボートにジェームスボンドとボンドガールに扮した方がアナウンスするという魅力的な内容でした。宿泊ホテルはカジノがあるAstral Tower & Residences でした。参加者が自由にディナー後の時間を楽しめる環境も素晴らしかったです。 何事も経験。聞くより見るより、出来る限りの経験はしたほうがいいと感じています。

ザ・ペニンシュラ東京 鎌田 真理